Stern Pinball/2020ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ(Pro版) | ||
原題 | Teenage Mutant Ninja Turtles(Pro) | |
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製作年度 | 2020年 | |
ブランド名 | スターン・ピンボール | |
メーカー | スターン・ピンボール・インコーポレイテッド | |
スタッフ | デザイン:ジョン・ボーグ/ソフトウェア:ドワイト・サリヴァン/美術:ゾンビ・イエテイ(ジェレミー・パッカー)/音楽:ジェリー・トンプソン/メカニクス:エリオット・アイスメン/LCDグラフィック:チャック・アーヌスト、ジョシュア・クレイ、他LCDチーム | |
標準リプレイ点数 | ― | |
備考 | ― |
▲とても当てやすいL-A-I-Rターゲット。修行モードリットやバトルモードで活躍 | ▲Pro版バックグラス。前作デコ版タートルズより作風が格段と今様になった |
▲フロントキャビネット。他バージョンのアートも面白いので見たい方は公式サイトで是非 | ▲サイドランプすぐ袂のピザスタンダップはトッピング追加の効能よりも、バトルモードでの時間延長作用が強力。マルチボール併発ならドカドカ当たる |
▲フィールド上部。ピザディスク段差で毎回ボールシュートのヴェクトルが狂うのには参った | ▲オーソドックスな2本のトップレーン&バンパー地帯。サイドフリッパーへのボールフローを優先しながらも巧くこちらへのボールコースも配されている |
▲フィールド下部とエプロン部分、及びモールディングバー。スマートボタンはピザ大食いコンテストで活躍。躍動するタートル達が爽快 | ▲A-P-R-I-Lターゲットへのヒットによりアウトレーンボールセーヴとカウントダウンボーナスが発令。エイプリルは色んな時に助けてくれる |
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【1st.インプレッション&雑感】 世界を揺るがす感染症が猖獗するさなか。 2020年6月に「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」のピンボールがスターン社から無事リリースされた。 タートルズのピンボールと言えば皆様ご存じ、同ファクトリーのデータイースト時代である1991年、既に一度ピンボール化されている。 “アダルト層プレイヤーが中心のピンボールテーマに歴史の浅いぽっと出のキッズアニメなんか” と、制作時には物議を醸した企画であったが、いざ完成するとその懸念は払拭。 当時は珍しかったオートシューターマルチボールやドットディスプレイなどの斬新さに加え、小気味よいサウンドと爽快なプレイフィールド、スピーディーなゲーム運びが好評で、格闘ゲームブーム勃興さなかにありながら国内のゲームセンターでよく出回った。 それから29年。“タートルズ”はすっかりフランチャイズ化され、度重なるリメイクアニメに劇場映画に実写化に……と、全世代に浸透する馴染みのコンテンツへと進化した。 一方、一時的な反映を謳歌したデータイーストピンボール社はその後、日本側親会社の経営危機により米セガへ二束三文で売り払われてしまう。まるで溺れる者へ穴の空いた救命ボートを放り投げるように。 結局本家デコは数年で沈んでしまった。 アメリカの国粋であるはずのピンボールファクトリーがセガ製ビデオゲーム筐体の下請け製造としてこき使われ、セガ側所有キャラクターをトレードマーク以外、ピンボール商品には一切使用させない。 そんな薄遇を受けた挙句、未曾有のピンボール市場低迷という比類なき苦境が続く。 これに奮起したGMのゲイリー・スターンが一族の不動産を処分してまで会社の権利を取り戻した。 ゲイリーはファクトリーを“スターンピンボールインク”に刷新。その後ファクトリーも移転、風雪を経て幾星霜。 2000年代は“ラストマンスタンディング”と揶揄されたが、プレイヤーもイベントも大会も年々増加傾向へ。市場が右肩上がりの2010年代後半に入ると、スターンはピンボールメーカーの最大手となった。 そんなスターンと、そんなタートルズが再び邂逅し、現在のピンボールシーンに相応しい傑作を世に送り出してくれた!ブラボー、スターンピンボール! 2020年8月、大阪心斎橋ビッグステップ内《SilverBallPlanet》に入荷されたのはPro版。廉価版とは思えない程高いゲーム性とメカニクスとボールアクションが堪能出来る珠玉の逸品だ。 行きずりの一般客の中には豪華絢爛な新機種を素通りし、なぜか一番やって欲しくない「ホーンテッドハウス('82)」や「Mr.&Mrs.パックマン('82)」の前で突然立ち止まってにコイン投入したりする人もいて、こちらとしては何とも口惜しい。 頼むからニューマシンを打ってくれ!ピンボールは最先端のゲームなのだ。 早速プレイ!愛嬌たっぷり且つ気のいい4匹が皆のコイン投入を待っている。 【主要マルチボール】 [ピザパーラーマルチボール]――――――基本3ボールマルチ。実働ボールロック。 ロック箇所は上部左奥“ピザパーラー”キックアウトポケット。ピザ型猛回転マグナディスクの連結ぶん回し稼働が痛快だ。 青アローライトをやっつけてフットを計6人倒すとサイドループに“モンドジャックポット”点灯。LCDのデモが楽しいんだけど観てる暇がない。 マルチ開始前にバンパーやピザスタンダップで揃えておいた“トッピング”によってあれこれマルチに恩恵付加価値があるのも面白い。 ソーセージはフット退治+10万、タコは全スイッチ3000点以上のフレンジー、グミはアドアボール、アイスクリームはモンドJP点灯……等々。 [タートルパワー・マルチボール]――――――右ランプレーン4回シュートでマルチ開始。基本4ボールマルチ。Pro版のみ擬制ボールロック。 一旦各JPライトが全開になるが、やっつけていくうちにアドアボールが右ランプにかかり、スーパージャックポットは左サイドアンダー内部左端ポケットに掛かる。 獲得時や修了時に大見得を切る4亀の決めポーズが爽快! 両マルチボールは1回終えるとすぐには再構築できないが、バトルモード折り返し地点で発令するプレウィザードを済ますことでボールロックが可能となる。 【バトルモード/エピソード】 基本30秒+アドモアタイムによる時間制シングルボールミニゲーム。初代アニメ各話に沿ったストーリーラインが勇壮溢れる音楽と共に展開する。 開始箇所はピザパーラーのロックポケット。消灯している場合、左右ランプレーンショットで再点灯。 それぞれ課役をこなした後、最後のトドメを刺すにはキャプチャー箇所(4亀各位担当のロックポイント)へのシュートで完遂。モード開始後のマルチボール併発可。 ※プロット原作は1987年版アニメ各話からだが、ミニゲームタイトルはピンボールのオリジナル。邦題も筆者が好きにつけてみることに。 [宿敵シュレッダー登場] Pizza-O-Meter――――――点滅全メジャーショット3回で完遂リーチ。 最も簡単なのでマルチの力を借りずに勝ちたい。 [ビーバップとロックステディを倒せ] Window Shopping――――――奴らの弱点は左右ループ。難易度が高いのでマルチ併発に逃げてもいいが、無理に必勝を目指さず、行程が似通う“ウェポンハリーアップ”を落ち着いて併用する戦略も吉。 [クランゲの野望] I Want A Body――――――左右ランプ⇒左右ループ⇒全ランプ&ループが弱点。難易度が低いので是非シングルボールで決めたい。 クランゲよりシュレッダーさんの熱演が胸に迫る一編。 [大群マウサーズの襲撃] Night of the Mousers――――――10秒しかない時間制限が特殊。L-A-I-R&A-P-R-I-Lターゲットも含めたメジャーショット全箇所有効だが、矢継ぎ早にコンボを決めて時間延長させないとあっという間に負けが確定。但しマルチ併発だと楽勝。 勝敗関係無くバクスター君にはおしおきが待つ。ところでアニメ本編でバクスターは老科学者だがここでは金髪白衣のお兄さんになっている。 [スプリンター師匠を助けだせ] See You On The Other Side Ray――――――点滅メジャーショット⇔L-A-I-Rターゲット交互ショット3往復で完勝リーチ。マルチとの相性もいいがシングルでも比較的易しい。 戦いの背後で振り子の様に吊るされている心許ないスプリンター師匠が笑みを誘う。 [凶暴ミュータント亀スラッシュ降臨] Welcome to the Concrete Jungle――――――左ランプレーン3回⇒点滅メジャーショット4回という最難関。前半フェーズはXスタンダップでも進捗。マルチのどさくさでクリアするのが吉。 但しXディメンション突破後のライトショウ演出は楽しい。尚スラッシュだけあって原題はガンズアンドローゼズWelcome to the Jungleの洒落。 [蠅男子バクスターの空襲] Super Fly――――――ランプやループの点滅箇所3回でリーチだが、サイドランプ/サイドループショットが難しく、フリッパーテクニックが問われる。 疾走感溢れる音楽やエイプリルが時間稼ぎサポートしてくれる演出が上々。 [クランゲの復讐] The Wrath of Krang――――――点滅サイクルおっかけもの。逃げ回る赤ライトを3回打てば勝利リーチ。黄色いライトはサイクル箇所断絶の効能はあるが、ショットの得意な箇所は残しておいた方が得策。 これも音楽がワイルド且つ情熱的で楽しい。 [相棒マルチボール] Team Up Multiball――――――全バトルモード折り返し地点のプレウィザード!基本2ボールマルチ。 バトルモード4つこなすと左ランプにこれが開始リーチ。誘拐された3亀を残った1亀とその“相棒”が救助に向かう。 タートル達の危機に盟友が駆け付ける演出といい緊迫感のある音楽といい一筋縄でいかぬルールといい、手応え十二分の一編。 1亀救助するとアドアボール、全亀救出成功後は“ピザパーティー・ヴィクトリーラップ”で荒稼ぎが見込める。 [フィアナルバトル〜ポータル・イン・ザ・パーク]――――――大型ウィザード。8話全てのエピソード遂行後左ランプに掛かる。 8話分の戦績比例でなだれ込む巨額ボーナス集計はオープニングに過ぎない。フット軍団らを倒すフェーズ1、ビーバップとロックステディのコンビを倒すフェーズ2、シュレッダーらを超次元へ飛ばすフェーズ3で構成。 失敗するとやり直しが効かぬシビアさがいい。 他にも冴え冴えしいフィーチャーが盛りだくさん。 右ランプレーンに掛かるカウントダウンボーナス[エイプリルの臨時ニュース]。 スキルショット成功+リターンレーン対角コンボ+サイドランプシュートで各亀お得意武具による際やかな演武が見れる[ウェポンハリーアップ]。 左内リターンからランプレーンやループレーンへのコンボショットでフットを3連続で倒す[Foot1-2-3]。 連続サイドループショットの直後にサイドランプレーンへ決める[クランゲコンボ]……等々。 ゲームオブスローンズやゴーストバスターズにあった[バンパースロットミステリー]もあって、いきなりEx.Sp.リットの望みもあり。 突然始まる[ピザ早食いコンテスト]でスマートボタンを40回連打、ボールが跳ね回ってるのもお構いなしに40スライスを制限時間内に完食せねばならない……なんて無理筋フィーチャーも。 軽妙なサウンドと華やぐライトショウと共に、スリリングなフィーチャーがのべつ幕なし矢継ぎ早。次から次へと試練が降りかかってくる構成が素晴らしい。 そして全てを修了した後に立てられる御膳が、グランドフィナーレ[カワバンガマルチボール]。 数千万単位で雪崩れ込むボーナスのトータル額は勿論、ニューヨークを救った英雄としてタートル達を称えるパレードが始まるLCD演出も素晴らしいので、是非到達を目指して頂きたい。 そして忘れてはいけない、プレイスタート時の4亀のセレクトについて。 プレイヤーは開始時には左右フリッパーボタンでレオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテロの誰かを選ぶ事が出来る。 実はRPG要素があり、4亀それぞれ経験値レベル1〜4に伴ってプレイ戦況に違いが出る。選択・スタート時はレベル1だ。 【レオナルド】――――――遠望深慮の剣豪者 ●レベル戦力:@初回修行モード即点灯/Aバトル10秒延長/Bウェポンハリーアップ2X/C相棒マルチ2X ●SkillShot受け持ちレーン:師匠の道場(下部左端サイドフリッパーアンダーポケット) ●相棒:スプリンター師匠 [コメント]………初心者、上中級者共に非推奨。バトルタイム延長以外全然美味しくない子。スキルショットも厄介。 【ラファエロ】――――――暴虎馮河の荒くれ者 ●レベル戦力:@初回バトルモード即点灯/Aクランゲコンボ2X/Bプレイフィールド2X/Cバトルモード3X ●SkillShot受け持ちレーン:ディメンション(左ランプレーン) ●相棒:ケイシー・ジョーンズ [コメント]………グラチャン狙いの上級者には是非推奨。レベル3、4到達後バトル2巡目に入ると最強。 【ミケランジェロ】――――――天真爛漫ムードメーカー ●レベル戦力:@初回アウトレーンボールセーヴ即点灯/Aエイプリルの臨時ニュース2X/Bピザ早食いコンテスト2倍/Cピザマルチ3X ●SkillShot受け持ちレーン:ピザパーラー(ロックポケット) ●相棒:ニュートリノス [コメント]………中級者推奨。ボールセーヴやピザ倍額は勿論、スキルショットとウェポンを成功させ易い利点も大きい。 【ドナテロ】――――――メカニック肌の司令塔 ●レベル戦力:@初回からタートルパワーマルチ即点灯/Aフット1-2-3コンボ2X/Bボールセーヴ時間延長/Cタートルパワーマルチ3X ●SkillShot受け持ちレーン:グライダー(サイドランプレーン) ●相棒:タートルロボ [コメント]………初級者推奨。いきなりマルチボールリーチなのはデカい。スキルショットが難関のサイドランプという欠点も初心者には不問だろう。 で、このレベル1〜4の数値はスプリンター師匠の道場での[修行モード]で上げられる。 リット条件自体は平明なターゲットヒットだが、内容はランプレーンやループレーンへのショット試練を順列に課す厳格なもの。 この修行モードだけは代替えが効かない。課役順列厳守、制限時間厳守、マルチ併発一切不可!……というシビアさの歯ごたえが堪らない。腕が鳴る。 尚、チームアップマルチで組む相棒や各亀得意の武具の違いによるスコア及びフィーチャーに優劣はないが、嬉しそうにロボットを駆り出すドナテロ、ヌンチャクパフォーマンスを決めるミケランジェロ等々、グラフィックやキャラの賑やかさ・派手やかさが存分に楽しめる。 総評を申し上げると、欲目むき出しで恐縮だが五点満点で★が五つ並ぶ満点を献上したい。 メリハリよく場面転換して次から次へとフィーチャーを畳みかけるテンポの良さ。色別LEDアロー明滅とLCD教示で啓蒙するルールの分かり易さ。縦糸のバトルモードウィザードと横糸カワバンガウィザードを巧みに縫い合わせたフィーチャー編成。マグナディスクで連結ボールをぶん回す仰天メカニクスマルチボール。 斬新さや画期性は無くとも、過去作から練磨を積み重ねてきたスターンピンボールの技術が、ここでは上製に彫琢された仕上がり。極上の一級品である。 ピザディスクの段差で球が跳ねたり、バンパー地帯から左アウトレーンへ落ちるコースが理不尽だったり、プレミアム&LE版で解消されているもののPro版ではボールリターンが左フリッパーばかりに偏っていたり。 理不尽な難易度に鼻白むプレイヤーも多いかとおもうが、腕前さえあればこの不条理さこそピンボールの真骨頂だろう。 そして何よりも、「タートルズ」の作風や世界観の愛らしさたるや。 レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテロの4亀がとびきりに可愛らしい! 主人公達のみならず、豚野郎ビーバップ&サイ獣人ロックステディ、蠅男子バクスターといった敵役や脇キャラまで、その愛嬌っぷりには思わず見惚れるよう。 1987年版テレビアニメを底流にしながらも、作画のタッチは本家アニメや映画版のどの時代のものよりも洗練されている。 しかもピンボールオリジナル音楽の肌合いが大変に巧妙で、1980年代後半の録音と聴き紛うばかり。当時のテクノサウンドをリアルに再現していて、元シンセアルバム好き高校生だった身としてはゾクゾクする程堪えられない。 これは最早、タートルズフランチャイズアニメの本流に入れるべき立派な新作と言っても過言ではない。 バトルモードの勝利版/敗退版わざわざ2通り用意する各CGなども大変丁寧に描かれている。辿り着けなる人の少ない最終ウィザードのアニメーションまでしっかり作り込んであった。 陰鬱な暗いイメージがない。カラフルで際やか。登場人物全員に華が有る。 強いはずの師匠やタートル達が事ある毎に縛られて誘拐されているのには笑ってしまった。昔のチャーリーズエンジェルみたいだ。 グロテスクアート、ハードロック、SF映画の無機質カラーが続くピンボールラインナップの中でこの華やかさは一頭地を抜いている。 まるでお酒と肴ばかり出される通りでセロファン包みのカラフルお菓子の盛り合わせにありつけてはしゃいだような気分。 十分風格があった'91年版を大いに凌駕し、上書き更新を果たした。ファンとしてプレイヤーとして大満足である。 ところで、スターンピンボールはこの大変な時期に、よくぞファクトリーやディストリやシッピングを最低限に抑えつつ回してくれた……と感心しきり。 2020年3月。世界各国で行動制限や封鎖が敢行される中、スターン社は大半の社員にリモートワークを命じ、マスク着用と各位持ち場に透明パーティション設置の対策を徹底。限られた人数でファクトリー稼働を継続させた。 ものづくりと最新テクノロジーのシンクタンクだけあって、そういった対応と導入は速やかである。 しかし悲しいことにアーケードエキスポ、テキサスピンボールフェスティバル、ミッドウェストゲーミングクラシック、PUバトル、オランダピンボールマスターズ……等々。タートルズ完成披露を予定していた主要なイベントは軒並み中止になってしまう。 スターンはどのイベントでもタートルズに纏わる大掛かりな催し物を準備万端に用意していたのに、すべてご破算となった。他社にも世間にも降りかかった災難とは言え、これは本当に残念だ。 しかし悵然としてはいられない。逆境への不撓不屈精神こそピンボール産業のちからこぶ。 現タートルズ管理ライセンサーであるニコロデオン社とのコラボレーション計画は活きており、160万人以上のフォロワーを抱える同社公式ソーシャルメディアチャンネルは、最新タートルズピンボールの完成を歓待。トップニュースとして取り上げ、ゲームトレーラーは24時間で再生10万回越えとなった。 あちら側のファンに恥じない出来のピンボールが完成し、ライセンス元の界隈にも喜んで頂ける。ピンボール産業自慢の経歴がまたひとつ増えたようだ。 一方、スタッフクルー達による今回の尽力も大車輪。 デザインチーフのジョン・ボーグはマグナディスクとサイドフリッパーとサイドランプレーンの溺愛を公言しており、今回もプレイヤーを散々悩ませながらも大いに楽しませてくれている。 メカニクス担当は、メカニカルチーフ就任5作目のエリオット・アイスメン。 “サーボ機構のランプレーンでは左右リターンをスマートボタンで切り替えできるし、クランゲが科白に合わせて上下するし、タートルバンの扉が開いてロックされていたボール4個がリリースされる(注:Pro版でこれら機能は削除)。今回は思う存分好きなだけトイギミックが作れたんだ” ……と嬉しそう。 プログラマーのドワイト・サリヴァンはご存じWMS出身、「ジャンクヤード('97)」や「チャンピオンパブ('98)」の作者でもある業界のベテランで、ハードもソフトも熟知するオールラウンドの才人。 4亀の誰かを選んでレベルアップさせるRPG要素は彼のアイディア。 しかも隠し操作で4人協力モードが発令。レベルもステイタスも全員で共有し、実質12ボールで戦いへ臨める“コーポレイト・モード”も盛り込んだ。 また、今機種及びコード配信から“DJモード”が各スターンピンボールに搭載。 これによりフリープレイ設定時、全サウンドトラックがジュークボックスの如く聴き放題となる。 YouTubeなどで違反扱いとなりそうな著名トラックを除外する機能も備えられており、マシンオーナーがプレイ実況をアップロードする前提が当たり前となりつつある。 トム・カイズヴァート&マイク・カイズヴァートはサポートプログラマーだが、本作ではなんと声優も務めている。 “い〜〜っひっひっひ……”と狡猾そうなクランゲの声を勤めるのがトムで、シュレッダーやケイシージョーンズのオーセンティックなハスキーヴォイスを演じているのがマイクだ。 ピンボールスタッフの多才ぶりには驚くばかり。 そしてJボーグもDサリヴァンもカイズヴァート兄弟も、 “彼がいなければこれほどの完成度にはならなかった” と異口同音に称賛するのが、美術チーフ“ゾンビイエテイ”ことジェレミー・パッカーの健筆な仕事ぶり。 過去作「アイアンメイデン」,「デッドプール」,「ゴーストバスターズ」,「プライマス」でその逆巻くような筆力は証明済みだが、この度の筆勢には返す返す、どの時代のタートルズアニメ、タートルズ映画、タートルズビデオゲームよりも、アップデートな清新性がある。 凡庸な美形化はせず、ゲテモノ趣向の楽しさを損なわず、尚且つ今様の麗しさが特出している。 プレイメイト風巨乳エイプリルしか魂がこもっていなかった'91年版と比べて診てみると、一層面白い。 因みに、Pro版より3,000$高価なリミテッド版は、アイスメンが語った通りタートルバン実働ロックやグライダーがボールを振り分けるディヴァーター、クランゲメカ、シェイカーモーターがプレミアム版と同じく搭載されているのみならず、 ミラーバックグラス、フィールド両脇アートブレード、タートルズカラーである青りんごパウダーコーティングフレーム、照明反射防止ガラス、ハイクオリティースピーカー音響システム……という、悶えるような豪壮な仕様に加え、フィールドの片隅に直筆サインが落款の如く穿たれている。 ……と言っても、亀忍者の原作者や版権元管理者ではない。 ゲイリー・スターンとジョン・ボーグのサインだ。 “えっ、タートルズの原作者じゃないの?それ誰?有り難いの?” と、一般人は訝しく思うかもしれない。 しかし、世界のピンボーラー達にとって生き神であるスターン社プレジデントのゲイリーと、数々の名作を苦難の末に生んできた名匠ボーグの一筆こそ、リミテッドモデルの総仕上げに相応しい。 世界中のピンボールプレイヤーにとって、彼らのサインこそ入魂の画竜点睛なのである。 (2021/5/5) |
▲下部左端サイドフリッパーアンダーポケット。スプリンター師匠の修行道場。タートルパワーのスーパーJPもココ。 | ▲選んだ4亀によって戦況に差異が出る。初心者はすぐマルチが始められるドナテロがおすすめ。 | ▲ここも重要な右ランプレーン。通しにくいと言うより、ミスショット時の跳ね返りがとても危険。 |
▲タートルバンの下をくぐって奥に入れるポケット[ピザパーラー]。マルチのボールロック、バトルモード開始が関わる重要箇所 | ▲Pro版では削除されているが、本来グライダーはボールディヴァーターとして左/右のボールリターンを振り分ける装置 | ▲フィールド下部にはバトルモードで戦々交えるシュレッダー軍団の皆様が描かれる。タートル達に劣らずみんな可愛い |
▲左アウトレーン近辺。リターンレーンを2本設えた為バウンス空間が生じ、アウトレーンドレイン目測が難しい | ▲フィールド全景。ゲテグロよりも可愛いらしさが前面に出た華やかなアートワークが極上の出来。 | ▲右アウトレーン。ご精読有難うございました。 |