小牧メトロポリス レトロゲーム復活祭/愛知県小牧市




― DATA ―
アクセス愛知県小牧市/名鉄小牧駅徒歩25分/小牧コロナワールド敷地内
ロケーションのタイプシネコン敷地内アーケード
台数5台/'70年代リールドラム台、'70年代後半ソリステ台、'90年代前半ドットディスプレイ台で編成/差し替え有り
調整常駐係員非対応/リース元による整備は有り
設定1プレイ100円(全時代)/エキストラ標準/スペシャル標準/リプレイ設定は不整合/プラムティルト設定標準/ティルト警告は2回まで/マッチナンバー設定は標準/2コイン3Cr.設定の無し/ハイスコアアウォード有り/音量は普通程度
営業時間午前10時〜深夜0時/土日祝午前9時開店/年中無休
その他付加サービス
その他ルール入場無料/禁煙/配置のスペースはまずまずだが、照明・蛍光灯のガラス反射がやや問題/オールドビデオゲーム、オールドエレメカ、瓶コーラ自販機も設置

稼動ピンボールリスト

ドットマトリクス台
アダムス・ファミリー1992年/ウィリアムス良好
ロッキー&ブルウィンクル1992年/データイースト普通


ソリステ・デジタルディスプレイ台
プレイボーイ1978年/バリー最良


エレメカ・リールドラム台
ジェミニ1978年/ゴットリーブ最良
カーニバル1971年/セガjp普通




■またもや愛知で意外なピンボールスポットが登場。

 中部地区に展開するシネコンチェーン“コロナワールド”の系列店舗で、小牧市のゲームセンター《小牧メトロポリス》の一角。その名も“レトロゲーム復活祭”

 '70年代から'90年代のアーケード製品をリバイバル稼働する趣旨の催し。終了期間未定で現在も出展中。
 そのブースで5台のピンボールマシンが設置されていたので丸1日かけて全機種を吟味。ここに総評をリポート致します。


 こちらで出品されている筐体はコロナグループの資材ではなく、実は外部からの提供が。

 自論と迷言、そして頑迷な自己流による整備とセレクトで賛否のある、あの犬山市《日本ゲーム博物館》の後ろ盾で成り立っています。

 おしゃべりや読書を禁止する偏屈店主のラーメン屋とかにも特需が集まるご時世ですし、この博物館の存在自体は決して否定してはいません。
 ただ、申し訳ないですがリンク先で評したようにピンボーラーとして諸手を上げることは、とても難しい……というのが当サイトの判断です。

 しかしこちら《小牧メトロポリス》は誰もが気軽に入店できる一般的ゲームセンター。
 近くにピアゴもシネコンもネットカフェも有り、娯楽施設内のロケーションとして入場料の発生無くいつでも誰でも入店してフリッパーを打つことが出来る、往年のようなアーケードロケーションが突如姿を現してくれたのです。

 もしかして小牧コロナの支店長さんやメトロ店長さんも、ピンボールに一家言お持ちの方なのかも、と期待しました。
 ……が、詮無いことに同店舗YouTube公式アカウントの「アダムス・ファミリー」の、初めにプランジャースキルを図るどころか絶対にやってはいけないダブルフリップを繰り返す論外なプレイ動画を見せられれば分かる通り、店側のPINへの素養や博識は絶望視せざるを得ませんでした。

 さらに、後述もしますがメトロポリス側はメンテナンスにも全くタッチしておらず、飽くまでブレインは博物館側に依存しているようです。

 とは言え、非常に難渋な立地だった日本ゲーム博物館のピンボールマシン・ラインナップの一部が、一般的複合娯楽施設内のゲームセンターでプレイできるのは悪くない吉報です。

 午前中に来館し、映画や外食を嗜みながらじっくりフリッパーを打つ。そんなかつてのピンボーラーの休日の過ごし方が、小牧市という意外な地で甦った訳です。

 四の五の言わず、先ずは来店してプレイしましょう。

ココではコレが面白かった!

●「ジェミニ」ゴットリーブ'78年製


 '70年代後半発表の「クレオパトラ」「シンバッド」「ジョーカーポーカー」「ドラゴン」……等々、この時節のゴットリーブ台には1万台ユニットのソリステ版と数百台製造のエレメカ版の両バージョンが存在するモデルが多数生まれているが、その盛りにあたる発表だったはずの今作「ジェミニ」には、なぜかソリステ版が存在しない
 既に時代遅れになりつつあった、リールドラムスコアユニットとベル音が駆動するエレメカ仕様のみのリリースである。

 ゴットリーブ側としては恐らく、ジェミニの前後商品である「未知との遭遇」「チャーリーズエンジェル」だけで、もうダブルバージョン政策は十分……という判断だったのだろう。

 しかしこの「ジェミニ」のゲーム性の高さは前述のコピライト・ビッグタイトル商品にも全く引けを取らない秀逸さを誇っている。

 プランジャースキルが重要視される色別トップレーンカラーリングドロップターゲットと呼応する各色のロールオーバーたち。赤・白・青・黄全4色の役の完成で点灯するEx.とSp.ライト。そして満タンにしたアウトホールボーナスを2X・3Xと倍掛けしてなだれ込んでくる、クセになりそうなボーナスビッグポイント!

 この時期のゴットリーブ台の特色と作風がくっきりと刻印されたマシンで、3ボール目だけ倍率がサービスされるという、いかにも'70年代ピンボールらしい施しにもニヤリ。

 加えるに、美術担当ゴードン・モリソンの筆による、プレイフィールドとバックグラスの魅惑的アートワークの素晴らしいこと。
 天体・占星術・双子座をテーマに、天使と悪魔が美女二人による双児宮…と解釈したミステリアス描出は、芸術性の高邁さすら感じられる。
 殊に、同社同時期屈指の名モデル「カウントダウン」の宇宙に漂う謎めいた美女と作風が酷似。数十年の時空を経て彼女の姉妹に出逢えたような万感に浸った。
 デザイナーは「ロイヤル・フラッシュ」「スピリット・オブ・'76」エド・クリンスキ

 当日の台の状態は[最良]。ティルト判定も適切。
 1st.リプレイ12万、2nd.リプレイは16万だが、上級者ならオーバーフローの2巡目である22万、26万で3crd.4crd.目の確保も射程内。更には右アウトレーン・スペシャルもむしり取り、1プレイにつき5クレジットの荒稼ぎだって可能だ。腕がなるゾ!


 そういえばピンボールマシンと共に瓶コーラ自販機を置くロケーションも少なくないが、筆者が断じてコーラを口にしないのは、'80年代前半に親会社として実権を握ったコカコーラボトラーズ社こそ、ゴットリーブからピンボール事業を放擲させようとした許されざる仇敵である史実を忘れていないから!

 ……という訳ではなく、単に炭酸ドリンクが苦手なだけ。

 実はそれ以前にゴットリーブ側からコカコーラ社への歩み寄りがあり、「カナダドライ('76)」という同社商品のタイアップ台を発表していた来歴が有ったりするのだ。
 コーラもジンジャエールも、お好きな方はどうぞ遠慮なく飲んで頂きたい。

 但し台の上に置いてのプレイは絶対にご法度。倒してキャビネットにぶちまけたらオオゴトだ。


 



 バリー'78年製「プレイボーイ」に関してはリンク先で既に解説したので正史については概ね述べることは無いが、こちらの台の整備状況は極めて[最良]
 両フリッパーの打力、各スイッチ反応、ライト通電、清掃・ワックスがけ、ディスプレイ、全て稼働は麗しい。

 プランジャースキル及びナッジングでトップレーン@を狙い、下で待ち構えるバンパーからえいやっ!と横ナッジくらわせてワンクッションでグロット・キックアウトポケットへ放り込み!
 点けておいた二万五千ヴァリューがぐりぐりカウントされ、トップレーンへリエントリ!これを延々繰り返してスコアもアウトホールボーナスもうなぎのぼり。

 満タンになったアウトホールボーナス清算で“ルンタルンタ・ランタランタ♪”とテーマソングフルコーラス歌わせた日にゃあ、気分極上。

 1st.リプレイは24万、2nd.リプレイ50万
 勿論バニーガール・ドロップターゲットのスペシャルとカレンダーガール・スポットターゲットのエキストラボールも、問題なく撃破と行こう。


 セガjp'71年製「カーニバル」は驚くほどゲーム性が高い逸品なのだが、残念ながら左右フリッパーの打力が不足
 マシンを堪能させて頂くには苦しい状況だが、同セガjp台のメンテナンスの難しさは察するので、状態は[普通]とした。

 観覧車ライトの稼働でヴァリューが変動、バックボックスバガテル(パネル内パチンコ)で最高額1000点5Xで五千点、さらにEx.のチャンスも狙えるスリリングな仕掛けにはエキサイト。
 さらにプランジャースキルショットの重要性、リターンゲートによるボールセーバー、アップポストの稼働……等々戦略性の高さには舌を巻く。

 因みにバックボックスにバガテルの仕掛けを設える前例としてバリー'66年製「ゴールド・ラッシュ」、ウィリアムス'66年製「カサノヴァ」、'67年製「アポロ」、時代がぐっと下って'87年製「ビッグ・ガンズ」があるが、ロールアンダーとポケットの2段構え、且つボーナスヴァリューの倍率やEx.を役の完成でリットしておく……というメインのプレイフィールドと連動させた戦略性は、セガjpの「カーニバル」の他に類を見ない。

 ファーストリプレイはデフォルトだと二万三千点。なんとフォースリプレイまで設けられている。五千点ボーナスはデカそうだ。


 発売当時はゲーム性どうこうより初期故障などの状態の劣悪さが論外だった「ロッキー&ブルウィンクル(Adventures of Rocky and Bullwinkle and Friends)」データイースト'93年製
 迷走バブル期を象徴する落とし子のような粗悪台の一機種。

 状態は[普通]。後述するがボールスタック頻出ポイント有り。
 ブルウィンクルが手品をするバックボックスは難なく稼働、二か所あるVUKも健勝。
 通せないことは無いものの右ランプレーンの上げにくさは発売当時からの症状なので、何とも判断しにくい。

 リプレイ設定3億点はデフォルトのままだが、+二千万のブーストが掛かっている。


 旧態ROMバージョンながら楽しめたWMSバリー'92年製「アダムス・ファミリー」の状態は[良好]。当時から語りつくされたいわずもがなの一作。

 左右フリッパー及びサイドフリッパーは十二分の強さ。左フリッパーのアップダウンがやや浅いおかげで、ブックケースホールと右ループが入り易いという思わぬ恩恵も。
 クイックマルチとレイズザデッドで稼ごう!

 しかしデフォルト9千万のはずのリプレイが、1st.四千五百万、2nd.七千四百万という過剰な設定に。筆者が台から離れる頃には8クレジットまで貯まっていた。

 ジェミニのようなセカンドリプレイが珍しくなかった'70年代とは時勢が違いすぎるし、インカム視点では全く適切でなく、太っ腹精神どうこうではなく単にピンボールへの見識不足が伺えてしまう。

 実はコレ、ゲーム博物館側の施しでもメトロポリスの容喙でもなく、ピンボールに無知蒙昧な前のオーナーが独自の判断でいじったもの。
 実際に20年ほど前、筆者はそこの某社某店ロケーションで既に2nd.リプレイ設定をいじられた同じ台に触れている。“あぁ、あそこにあったアダムスだ……”と、こんなところでの思わぬ邂逅に苦笑い。

 それともう一つ鼻白む処理があったのだがこれも後述。




 近場であるアピタ岩倉の《友遊縁日》と比べるとマシンのラインナップが興趣に富んでいますし、マニアが足しげく通っている気配はありませんが、結構コイン投入してチャレンジしてみる学生のノーヴィスプレイヤーも当日よくお見かけしました。
 スタートボタンがどこか分からなかったり、フリッパーの存在を知らずプランジ後ぼんやり眺めてたりするものの、すぐに察して何とか遊んでくれてるようです。
 アピタ岩倉店との客層の違いを感じました。

 ロケーション的にも県境の山奥だった博物館より断然通いやすいし、近辺には一息つけるカフェレストラン、映画館まであって快適。ピンボーラーとしても何度か通いたい気分に駆られました。


 しかし閉口せざるを得なかったのことは、メトロポリス側の従業員さんがトラブル時に全く対応してくれなかったこと。

 


 上2枚の画像のとおりロッキーブルウィンクルとアダムスでボールスタックが起き、最初に女性店員さんを呼んでも対応できずにオロオロ。
 さらに彼女からのヘルプで呼ばれた先輩男性店員さんもどうすべきかさっぱり分からず、心許なく周章狼狽。

 キャビネットの開け方、モールディングバーの外し方、ガラスの開け方等の指導をして貰えてないようで、ボールスタックが起きたまま何も出来ず、そこでゲームは強制終了。これには困りました。

 加えるに、アダムスのモールディングバーとガラスに、なぜか梱包用透明テープが密封されてたんですが何がしたいんでしょうかねコレ。


 多分、ロックダウンレバーの固定がいかれて開けっ放し状態だったものの店側が手入れできず、苦し紛れで施したものと推察。
 殆ど毎日開ける必要のあるはずのガラスとバーに店員がテープ貼ってちゃ、そりゃボールスタックも取れませんわ……。

 私もこういった事態の場数を踏んでるので、スタックを起こして停止したアダムスに電源off/onとスタートボタンの連打を調教して1BallMissing状態から保護プログラムを発動させ、プレイを続行。
 まぁどうにかやりくりして楽しめました。


 ともあれ、元の整備状況は、吾妻社やマインドウェア社、大阪SBP程ではないものの、取り敢えずは及第点。
 上述した問題点を差し引いても、中部地区で美麗な「プレイボーイ」や「ジェミニ」が存分に堪能できるという、ピンボーラーにとって無視できないロケーションであることは確かです。

 さらに、一時期下げられていたセガjp'73年製「サーフィン」が現在戻ってきており、6台編成になったとのこと。これもかなり面白い台で、状態も良いはずなので期待できるはず。
 遠方からの来訪も決して無駄足ではない、としておきましょう。

 但し、メトロポリス側従業員の取り扱いが完全にノーヴィス…という危うさを承知と覚悟の上でどうぞ。

 



【所在地】〒446−0022
愛知県小牧市間々片山181
小牧メトロポリス
【営業時間】午前10時〜深夜0時/土日祝は午前9時開店
【tel】0568-71-0005
【関連サイト】小牧メトロポリス
【備考】
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(取材日:2016年8月18日)