各名門ブランド ピンボール・リスト

Stern Pinball/2021

ゴジラ(Pro版)

原題Godzilla(Pro)
製作年度2021年
ブランド名スターン・ピンボール
メーカースターン・ピンボール・インコーポレイテッド
スタッフゲームデザインチーフ:キース・エルウィン/ソフトウェアチーフ:リック・ネイグル/メカニカルエンジニア:ハリソン・ドレイク/美術チーフ:ゾンビ・イエテイ(ジェレミー・パッカー)/音楽:ジェリー・トンプソン/アニメーションチーフ:チャック・アーヌスト
標準リプレイ点数
備考
▲色遣いがコロコロコミック調なのは美術チーフ ジェレミーパッカーの作風というよりキースのセンス。あえて統一せず、落ち着かないカラーリングに。 ▲サイドフリッパーから狙うサイドループは是非マスターすべきショット。デストラクションジャックポットは高額、且つプレイヤーの技量が問われる。
▲これはポスターではない。ピンボールのバックグラスだ!ついにゴジラがピンボール本国イリノイシカゴ産で主役として迎えられたのである!日本語ロゴもバッチリ。 ▲プレイフィールド上部。各レーン,ポイントは隈なく活躍があり、ゲーム上で活き活き呼吸している。レーン構成も素晴らしい。
▲フィールド中部盤面では、X星人との戦況が里程標の様に表示されている。トーキョー,ニューヨーク,ロンドン,パリ。全都市を制圧してX星へ乗り込め! ▲メカゴジラゾーンもかなり重要で、スピナーでメカゴジラ発動、スクープでバトル/都市選択、バンパーでUFO撃墜、等々盛だくさん。

― COMMENTS ―
●この度、本機種スターンピンボール「ゴジラ」の評判が頗るよろしい

 ゲーム性,テーマ性ともども、スターンピンボールの新たなる活路を拓くマイルストーンとなるのは勿論、ピンボール市場における幾多もの記録更新を果たした―――と言うのだ。

 ピンボールマニア向けファンサイトTwipy Awards 2024でのゲームオブザイヤー受賞は勿論、ノミネートされた各部門の最優秀賞を総なめ。
 Internet Pinball Databaseのトップランキングでも、永年不動と信じられていた「アダムスファミリー」「トワイライトゾーン」「シアターオブマジック」「アタックフロムマーズ」「メディーヴァルマッドネス」等々'90年代名作群のレイティングスコアを全て追い抜き、20数年振りに新機種の「ゴジラ」プレミアム版が現行トップ1ホルダーとして、今も輝いているのだから只事ではない。

 この祝儀に満ちた騒動はピンボールマニアの内輪的サイトで収束するにとどまらない。

 スターン社は本機種「ゴジラ」で初搭載した[Insider-Connected]システムにより(まだまだ不完全ではあるが)ピンボール筐体ソーシャル化の端緒を切り拓いた。

 プレイヤーはスターン社公式サイトより各自アカウントを登録。スマホ画面からQRコードを筐体に読み取らせてログイン、プレイヤー個々のハイスコアをデータ化。
 戦績を一覧として参照出来る他、スターン主催のピンボールプレイ大会やイベントなどが随時ネットワーク内で開催、地元に居ながらピンボール世界大会に参加できる!という優れモノ。

 以降、この同社ピンボールの標準装備となったインサイダーコネクテッドは、同年アメリカのアーケードマシンショーAMOAにてイノベーション賞を受賞している。
 尚、本作以降、ピンボール各機種のバグ修正やコード更新が自動で進捗されるし、デモ中にはスターン社最新機種情報がLCD(液晶ディスプレイ)で流される。その気になれば、各ロケにゲリラ生配信とかも流せそうだ。

 2021年9月に発売されたゴジラピンボールのお値段は、Pro版6899$、プレミアム版8999$、そしてリミテッド版は会員限定1000ユニット10,499$
 同社前作より15%程の割高設定ながら、リミテッド版は完売状態で入手不可。

 ゲーム性の評判も、商品としての訴求力も極めて高い。

 2024年の7月にはゴジラが70周年記念を迎える時節にかこつけ、オリジナル映画第1作目を彷彿させるモノクロ調アートワークを新たに描き下ろし、「ゴジラ70周年記念特別版/Godzilla 70th Anniversary」として異例のリプロダクション製造まで行われた。それすら今は殆どのディストリで[Out of Stock]に。
 いや、入手可能ではある。が、今や取引価格は15,000$まで高騰中。円安不況に苦しむ日本人には手が届かない。

 ディストリ不在によりピンボールの新作など1台も入るはずのない日本国内ロケーションでも、ゴジラPro版が大阪心斎橋《SilverBallPlanet》に、70th版が茨城土浦《ライナーノーツ》に入荷。Insider-Connectedのシステム諸共、ゲームとしての完成度はマニア,一般層共々、大変覚えがめでたい。

 また、『日本産コンテンツの“ゴジラ”が米国イリノイシカゴ伝統のピンボールメーカーによりライセンシングピンボール商品化』という只ならぬ寿ぐべき事態も、非常に画期的なのだ。

 大作映画と言うより大味だったローランド・エメリッヒ/ハリウッド版「ゴジラ('98)」ピンボール化の前例はあるが、飽くまでアレは米国産のお品書き。
 今回の様に原産地日本の東宝と直轄にかけあって提携、オリジナル1作目の映像やサウンドは勿論、メカゴジラ、ミニラ、モスラ、アンギラス、キングギドラジェットジャガーまで所せましと登用。挙句にはヘドラまで出てくる始末。雑誌《宇宙船》を購読しているような特撮マニアでなくとも快哉を叫ばずにはいられない。

 さぞスターンピンボール内の企画立案者は、東宝からの許諾を貰えるほどの熱いゴジラ愛と、身命を賭すほどの熱意があったに違いない!?
 ……と思ったのだが、メイキングやスタッフインタヴュー音声をひと通り調べてみても、ゴジラPINプランニング初期の逸話が、まるで忌避するかの如く全く語られていない。

 それもそのはず。

 実はこの東宝ゴジラピンボール化の企画。元は他社スプーキーピンボールLLCが永らく温めていたものを、スターンが横槍で掠め盗ったものだった。

 ピンボール産業もビジネスなので競合の出し抜きがあるのは仕方ないが、スプーキー社は元をただせばゴジラのファンアート的な自主制作機種がはじめの一歩だった経緯を持つ、家族経営のメーカーだ。
 プロとして脇が甘いとか機密の漏洩がどうこうというのも酷な話で、プレイヤーサイドからすれば古豪がわざわざ業界志望の少壮の手から作品を剥ぎ取った様なもの。

 スプーキー側との折衝もなしに東宝ゴジラの許諾を好条件の高額入札で素早く横取りした黒幕は、スターン社版権許諾交渉の辣腕でマーケティング&ライセンシング部の部長、ジョディー・ダンクバーグ。マニア界隈では暫くの間、彼のことを“ゴジラ泥棒”と呼んだそう。

 まぁそれはともかく、今回のゴジラピンボール。ゲームの仕上がりは傑出なので是非遠方に出かけてでも体験して頂きたいマシンなのは確か。至情を込めてフィーチャー解説をもまとめていきたい。



【ゴジラマルチボール】――――――聳え立つビルにボールを叩き込んで崩壊し尽せ!シンプルで最も取り易いマルチボール
 狙い目はフィールド左上部ビルディングの中。ここへシュートを繰り返してマルチボール開始。初回は4回突入でOK。基本3ボールマルチだがボールセーヴが長く、アドアボール救援も複数あり。
 初回50万点、以降更に50万の上乗せ額が入り続けるジャックポットは、それぞれ倍率が異なる5色の点滅箇所。スーパージャックポットもビルディングの中で、JP6回獲得後に点灯。ヴァリューはそれまで獲得したJPの総額。更にゴジラパワーレベルアップ後における[MonsterZero]挑戦権も獲得。
 尚、豪華版ではボールが引き上げられてビル屋上にボールロック、マルチ開始時には一挙決壊するメカギミックが楽しめる。

【メカゴジラマルチボール】――――――メカゴジラ袂のスピナーをぶん回して奴と対決!
 狙い目はフィールド右下メカゴジラ袂のスピナー。20回転でメカゴジラ発動(Pro版だと見た目が変わらないが他の豪華版はここでメカアクションの展開がある)、更に周縁のスタンダップ2枚もやっつけてメカゴジラ出撃!3ボールマルチ開始。
 150万点+ヴァリュー上乗せジャックポットは各レーン青ライトだが、メカゴジラバンクと交互ショットが課せられるのが厄介。全部しとめるとメカゴジラスーパージャックポットがメカゴジラレーンに点灯。但し時間制。点灯後シングルボールに堕した後でもカウントダウンの猶予はあるので何としてでも仕留めるべし。これには例によってレベルアップ後の[メカゴジラの逆襲]挑戦権も掛かっている。

【怪獣バトル/シティーセレクト】――――――4つの都市でゴジラの宿敵を倒せ!60秒勝負
 バトル開始箇所は右下スクープ。トーキョー、ニューヨーク、ロンドン、パリの4都市でライバル怪獣と対決。時間内に点滅箇所をしとめるのが共通セオリーだが、過程が煩雑なものも多く、そう簡単には勝たせてくれない。
 勝っても負けてもセレクトで次の都市に移れる。勿論勝利しないとスコアに結びつかないし、少なくとも敵に5割報わないと[ティアーU]タッグバトルへの挑戦権も無い。負けてしまった場合同じ都市に留まればリベンジマッチも可。またティアーTバトルはレギュラーマルチボールと同時併発可。
 尚都市変更のリットは怪獣バトル,ブリッジマルチ,戦車マルチ,テスラストライクを遂行すればOK。ライバル怪獣と戦わずして他の役で各都市を踏破し続けても良いのだ。

[バトルティアーT]
・ガイガン………最初に選ぶならコレ。こいつの弱点は左オービットランプレーンと右ランプレーン。8回シュート成功でゴジラの勝利。左右コンボの方がヴァリューは高いがパス技使って右ばっか通した方が確実。尚リターンレーンで発動する[ジェットファイターズアタック]ハリーアップ群と重なる状況がよくあるが、けしかけられる演出に惑わされずガイガンを倒すのを優先。その後ジェット機全機撃墜を完遂させれば完璧。

・チタノザウルス………ゴジラマルチボールと重ねるならコレ。ビルディング入口左右のスタンダップ⇒右ランプレーン入口右脇スタンダップ⇒下部左下メーザーキャノンターゲット⇒そしてマグナグラブショットで完勝。マルチ同時開始ならなんとか勝てる敵だ。

・エビラ………弱点は3箇所の全スピナー。左右は15回転、中央は40回転の課役。正確なショットとフリップキャッチの腕前が試されるので上級者ほど堪えられない相手。但しマルチ並行は不向き。マルチの大量ボールはスピナーにはよく触れても回転の邪魔になってしまうのだ。シングルボール勝負推奨。

・メガロン………ランダム点滅おっかけもので、一番面倒臭い相手。点滅が消えると逃げられたことになり、別の無駄足ショットが課せられる。このランダム点滅は手早く7回やっつける必要があるので、これもマルチ並行作戦は不向き。

[バトルティアーUタッグ戦]
・ゴジラ+ロダン+アンギラスV.S.キングギドラ
………最も稼げるのはコレ。左右ランプ、ビルディング、ミニループ、サイドループが肝。どの箇所の緑点滅でもいいので繰り返し通し、緑から黄色、そして赤に変わったら脱出のチャンス。スクープに戻って“バトル続行or撤退”セレクトの撤退を採択しよう。バトル続行の時間追加で更に稼ぐのもいいけど、時間切れの失効の方が士気阻喪。バトル延長による勝利エンディングも用意されていないので注意。制限時間は75秒。

・ゴジラ+ジェットジャガーV.S.メガロン+ガイガン………3ボールマルチなので安全策で行くならコレ。但し稼げる額は控えめ。ビル+メカゴジラスピナー⇒左右ランプ⇒左オービットランプ+サイドループという各工程と織りなす様にスーパーJPがメカゴジラスピナーに掛かる。この“スピナーにJPが掛かっている”という示唆が乏しくて分かりにくいのはやや不満。

・ゴジラ+アンギラスV.S.キングギドラ+ガイガン………スピナー好きはこちら。75秒制限。40スイッチで各メジャーショットにジャックポットが点灯。いつなんどきもビルディングで“バトル続行or撤退”が選択できるのでシングルボール勝負ながら比較的気楽。スピナー、特にランページスピナーを打つのが得意なら稼げる一幕。

 ゴジラが4都市でのバトルを終えると、いよいよX星での戦いが待っているのだがソレは後述。


【デストラクションジャックポット】―――――― 一撃必殺、サイドループに一発こっきりチャンスの高額ジャックポット。轟けゴジラの咆哮!
 リーチはビルディングに掛かる。本丸ジャックポットショットはサイドループ。サイドフリッパー袂のマグナグラブにボールが一旦磁力で留め置かれてサイレンがとどろく。サイドループに掛かるは高額デストラクションジャックポット。しかもライバル怪獣を倒しておけばヴァリューX上昇。JP基本額もXもゲーム後半には鰻登りなので、このショット成功で得られる額は1億、2億…と高騰していくのが堪らない。ほぼ1発でしとめなければならない緊張感にゾクゾク。さぁ来い!というフリ演出も緊迫アナウンスも最高。
 このJPは主に都市から都市への移動で点灯する他、UFO撃墜賞与やサイドループ連続ショット、トレインADV.などでも点灯。
 一発で仕留められなくても大急ぎでテスラスピナーレーンに回し直し、今度こそサイドループに通し直せば間に合うこともあるが、元々球威と軌道が危険なコースなので冷静な判断が求められる。慌てるとドレインの憂き目だ。

【ジェットファイターズアタック】――――――劇的な6連続ハリーアップ。ゴジラに歯向かおうとする人類に成す術無し!
 開始ポイントはジェット機スタンバイが満タンになった時の左右点灯リターンレーン。点数は100万スタートと低いものの、ハリーアップがレーン3箇所まとまって並んでサイクル移動するので仕留めるのは比較的難しくはない。ショット成功毎にヴァリューが上乗せされるので連続ショットが爽快。しかも全額値が雪崩れ込む最後の6発目ファイナルショット箇所はランページスピナー。決まった時の満足感はひとしお。
 またジェット機撃墜数10回でEx.、15回でデストラクションJPX上昇…等々の賞与有り。尚リターンレーンのジェット機全6機スタンバイ進捗はメカゴジラスピナーが担っている。

【UFOアタック】――――――X星人が操る円盤を破壊せよ!〜右下バンパーヒットもメリットいっぱい
 フィールド下部右端の1個だけの単品バンパーはX星人のUFOの役割。このバンパーヒット/バンパーセンサースイッチ通過を規定数こなすと10秒間のUFOアタックタイム。ダイレクトにぶつけてUFO撃墜。基本地200万+α上乗せのボーナスの他、3機撃墜でEx.獲得、6機でUFOマルチボール(他のフィーチャーと重ならず且つアドアボールが親切なので気楽に稼げる)、他ゴジラパワーアップやデストラクションJPリットなど。

【モンスターランページ】――――――巨額ボーナス且つEx.もかかった長期戦〜シングルボール点滅サイクル連続狙い打ち
 左下ランページスピナーに掛かる。初期値300万開始のメジャーショット移動点滅サイクルハリーアップ連続獲り放題。獲れば獲る程ヴァリュー上乗せと倍掛けの炸裂が凄まじく、サイクル一巡完遂なら3億は堅い。また12回成功でEx.のご褒美もデカい。
 リーチ手順はR-A-M-P-A-G-Eレターの完成。レターの追加方法は同箇所ランページスピナーショットだが、効能消滅状態だった場合は都市変更やデストラクションJP獲得で有効化出来る(つくづく、役の配剤がうまい具合にバラけられている)。
 怪獣達が次々と街を破壊する映像と野太いビートの音楽による演出によりアドレナリン全開。

【ゴジラパワーアップレベル】――――――秘めるゴジラパワーが覚醒〜目指すはキングオブモンスター!
 ゴジラパワーメーターが満タンになる度に右下スクープで二者択一セレクトフィーチャーを獲得できる。
 初期のレベルでは[レギュラーマルチボールJP初期値上昇],[怪獣バトル時間延長],[デストラクションJP時間延長]など。
 中堅レベルとなると[モンスターゼロ]や[メカゴジラの逆襲]リット、[スーパースピナー]や[マグナグラブ]の倍率上昇など。
 8以上だと[同盟モンスター集合],[デストラクションJP倍率2X上昇],[ランページ倍率上昇]、そしてファイナルである[キングオブモンスターズ]リット。
 ゴジラパワーメーター値の目盛り上昇の条件は、各フィーチャーに成功の難易度を酌んでバランスよく配せられている。一例を挙げると、各レギュラーマルチボールの開始は+1。各フィーチャーの開始は+1。怪獣バトルストレート勝ちは+2。サイドループ10連続ショット成功は+3。X星を制圧すると+6…などなど。

【アーライズ/同盟怪獣】――――――ロダン、モスラ、アンギラスの援護で応戦だ
 3頭の同盟怪獣が、3種のそれぞれ有用なフィーチャーに準えられている。怪獣バトルの勝利で3頭まとめてスクープに点灯。リット方法は怪獣バトル以外でもジェットファイターズアタック成功やミステリー、サイドループ6連続成功…等々随所に多く配せられている。特にアンギラスは死にかけたマルチボールを生き返らせる効能があるので重要。

・ロダン………60秒間フィールド2X
・モスラ………左アウトレーンボールセーヴ
・アンギラス………マルチボール中のアクションボタンでアドアボール効能

【ヒートレイ】――――――令和のスマートミサイル!?アクションボタン操作で有効中の全フィーチャーを一掃撃破
 これが有効化してスマートボタンが光っていたら、2秒ほど押しっぱなし(100%充電)してから放そう。デコジュラシックやラストアクションヒーローの“スマートミサイル”の様に、フィールド上で発動中のフィーチャーが根こそぎ頂きとなる強力必殺フィーチャー。但しデストラクションJP不可、マルチボールや怪獣バトルでの効能に限っては1度きり、X星では効かない…といった制約アリ。
 このヒートレイはテスラスピナー初回60スピンで点灯。必ず2秒押しっぱなし操作を行わないと、アドアボールアンギラスの方が発令してしまうこともあるのでご注意。

【サイドループ】――――――サイドフリッパー連続ループショットに挑戦。回る回るジェットジャガーさん
 危険なショットだが、得られる役は大きい。3連続サイドループ成功でゴジラパワーアップ1目盛り。6連続ループで同盟怪獣獲得。10連続ループは3目盛りパワーアップ。また非連続でも回数の蓄積でデストラクションJPが点灯。
 ただサイドループショットの失敗は左アウトレーンドレインコースの危険が高いので、モスラがいないなら避けた方がいい。ゴジラレベル/ゴジラパワーが不足している時には一か八かで臨むもよし。

【オクシジェンデストロイヤー】――――――右アウトレーン特殊ボールセーヴ。ゴジラ死す!?カウントダウンの大ピンチ!
 ラスト3ボール目限定。右アウトドレインのボールセーヴだが球が復活しても安心するのはまだ早い。すぐに打ち出されたボールを12秒以内にビルディングに叩き込めばゲーム復帰だが、タイムアウトしてしまうと水中酸素破壊剤オキシゲンデストロイヤーの直撃により、ゴジラ死す…!一巻の終わりとなってGameOverに。失敗時に沈みゆく本編映像ゴジラもなかなか味わいあり。


【ウィザードモード】――――――複数フェーズが続けざまに折り重なる、凝りに凝った長期戦ウィザードが3種。隠しウィザードも!?

[モンスターゼロ]………ゴジラマルチボールでスーパーJP獲得、且つゴジラパワーアップセレクト時レベルが4以上だとこのリットが選べる。
 長めのボールセーヴ保証つきシングルボール・4フェーズボールロック勝負。緑のライト点滅をやっつけてはビルディングに1ボール目をロック(モード続行)。続けて2ボール目もロック(ヴィクトリーマルチのJPが3Xに)。更に3ボール目(JP5X)もロックしてゆき、4個目完了(JP8X)でヴィクトリーマルチボールへ。
 ロック成功時の手応えが痺れる。ロック4個完遂時には映画本編映像のデモも楽しめて、地球軍が超音波発信装置をきゅい〜〜〜ん♪と発射。“これ以上はやめろ!死んでしまうー!”とのX星人UFO墜落断末魔アナウンスも楽しい。

[メカゴジラの逆襲]………メカゴジラマルチボールでスーパーJP獲得、且つゴジラパワーアップセレクト時レベルが4以上だとこれが選べる。セレクト時は大抵ZEROかメカゴジ逆襲かの選択となっている。
 「アベンジャーズIQ」や「フーディーニ」でもあった、フリップ回数制限もの。全フェーズボールセーヴがあるが、かと言ってドレインにリスクが無い訳ではなく、落とす度に残りフリップ数がライフを削るようにどっと減ってしまう趣向だ。フリップ回数を使い切ったら問答無用で次のフェーズへ移行する。
 フェーズ@⇒30フリップ内に各スタンダップを全滅させよ。フェーズA⇒45フリップ以内に2ボールマルチでスピナーを回しまくれ。フェーズB⇒50フリップ以内に3ボールマルチで左オービットランプレーンと右ランプレーンを通しまくれ。フェーズC⇒100回フリップ限定4ボールマルチ!ヴァリューも箇所もボーナス額も今までの総決算。
 TILTさえ起こさなければ必ず最終フェーズまでゆけるし、慎重にこなせば相当の稼ぎが期待できる一遍。ただ挑戦資格となるメカゴジラスーパーJPがとても難しいので、ヒートレイやアドアボールはメカゴジラ対策にとっておこう。

[X星マルチボール]………なんとゴジラが地球脱出、木星圏内へ突入!X星で最終決戦だ。
 隠しウィザードを除き、本作で最も大掛かりなビッグウィザードがこれ。3ボールマルチでスタート。
 PoweLine3枚スタンダップ⇒テスラスピナー⇒全戦車ライト⇒メーザーキャノンターゲット⇒マグナグラブ5回⇒右ランプレーン⇒全メジャーショット黄色点滅⇒スクープで時間制高額ハリーアップ。これら行程をフェーズクリアのアドアボール救援で何とかしのぎながら、最後のハリーアップを時間内に必ず仕留める。シングルボールに堕してもモードは続行。最後まであきらめない!
 ファイナルショットが成功すると、X星人との和解が成立。後は140秒制限のヴィクトリーチャレンジマルチボールだ。課役内容は再びPowerLineターゲットからの総ざらい。尚これに完勝するとMonster Island Madness挑戦権の半分が貰える。
 行程は煩雑だが、凝った演出により全く苦にならず退屈しない。冒頭でゴジラがUFOにアブダクトされるシーンの緊迫感といい、宇宙をバックに全都市の総額が莫大化した地球ボーナスの大仰なカウントいい、X星での人智を超えた遭遇といい。演出的にも点数的にも大満足のビッグウィザードとなっている。
 尚、発売当初X星マルチ臨戦資格は4都市踏破が条件だったが、2024年頃のコードVer.辺りから、怪獣バトル開始+テスラストライク開始+陸橋崩壊マルチ+戦車マルチ開始、の4役踏破へと変更となっている。ただ、4都市で戦っていないと地球ボーナスがスカスカなので、やはり全都市でライバル怪獣を倒してから臨むことを推奨。

[キングオブモンスターズ]………これまでの怪獣達が勢ぞろいの4マルチボール。ゴジラレベル11到達で採択可。
 チタノ,エビラ,ガイガン,メガロンらこれまでの怪獣に呼応した箇所がそれぞれの弱点。全て倒すと例によって3頭援軍と共にキングギドラとの対決となる4ボールマルチが始動。
 このファイナルで初めて目にする怪獣達の映像が盛沢山。時間制限無し、ボールセーヴも長く、容易く終えられる気楽なウィザードマルチボール。X星やメカゴジラでは散々苦労したので、これぐらいのお祭り感が丁度よい。
 尚、キングギドラとの戦いが終わった時点で(通常なら)エンディングゲームオーバーを迎える。2周目が始まらないのには個人的に賛成である。

[モンスターアイランドマッドネス]………筆者未踏。X星ヴィクトリーチャレンジ完勝/キングオブモンスターズ完勝/10種コンボショットコンプリートのうち2つクリアにより、King of Monsters終了後に開始される隠しウィザード。


【その他】――――――面白いけど過剰に細密過ぎて網羅しきれない各フィーチャーも多数

[テスラストライク]………ミニループ入り口のテスラスピナー中心に高額ボーナスがドレインまで時間無制限で掛かりっぱなしという良さそうなフィーチャーなのだが、凝りすぎた手順が煩雑。ビル入口両脇と右ランプレーン入口右脇PowerLineスタンダップを全部やっつけて、もう1回やっつけて、更に点滅サイクルで逃げ回るのをやっつけて始動!というもの。都市移動ボーナス額に包摂

[ブリッジアタックマルチボール]………名作メディーヴァルのお城の如く、マグナグラブにボールをぶち当てると橋渡しランプレーンが微動。更に当て続けるとその陸橋が実働崩壊するメカアクションを実現。ところがそれは豪華版のお話でPro版では陸橋の部分は素のランプレーン。ブリッジAdv.進行が分かりにくく、突然開始しても何のマルチがなぜ始まったのか、Pro版プレイヤーはよく分からない。
 50スイッチ毎にマグナグラブにブリッジアタックが掛かるので、それを4回ヒットすればスタート。これも都市移動ボーナス額に包摂

[戦車攻撃2ボールマルチ]………地味なマルチボールだが一都市での戦況を充実させるのには有用。
 緑色の戦車ライトを10機やっつければスクープに点灯。マルチ中は点滅サイクルする戦車ライトがジャックポットで、マグナグラブが時間制スーパージャックポット。時間切れだとメーザーキャノンが残念賞の半額スーパージャックポット。
 戦車ライトが“ゴジラの足”であるマグナにだんだん近づいて来るのでそれを阻止するのだが失敗するとメーザーキャノンで再始動でどうのこうの……流石に捻り過ぎか。
 ただ、都市ボーナス包摂フィーチャーの中では最も開始が容易いので、こなしておくと都市移動ボーナスに額の跳ね上がりが期待できる。

[レイジコンボ]………右ランプレーンで開始する高額コンボショットなのだが、これが点灯する頃合いって大抵怪獣バトル後半戦にピリピリしていて非常に忙しく、正直構っていられない。ヒートレイ到達3回目で点灯。
 コンボ手順は右ランプ⇒左オービットランプ⇒テスラスピナー⇒サイドループ⇒テールウィップ(!)、という難渋さ。ボーナス額は300万開始で成功毎に+100万、完遂で2000万+デストラクションJP点灯。

[アドヴァンストレイン]………ブリッヂマルチとは別口で紛らわしい。左オービットランプレーンに掛かる。3トレインでゴジラパワーアップ、5トレインで五千万、10トレインでデストラクションJPリット+1X等々。トレインを点ける方法は、スクープショット、ビルディングレーン逆走、アタックブリッジショット。賞与はそれなりだがこれも狙ってらんない。

[マグナグラブ]………高圧電線に捉えられたゴジラ!脱出なるか!?
 マグナグラブキャッチでボールが磁力帯をぶらぶらスウィング⇒両ボタン同時押しでボール解放⇒ショット成功で得られるフィーチャー。この時サイドループショットに成功すると5倍の価値が得られるし、うまくふわっと放ってランページレーンを逆走させるとインポスターヴァリューが貰える。1回目成功1500万+同盟援軍到着。2回目2000万+都市ボーナス1%サービス。3回目3000万+デストラクションJPX上昇。4回目2億5千万。
 マグナグラブを有効化するには右リターンレーンのマグナグラブリットが必要で、更にこれを点けるにはチタノザウルスとの対決でも苦戦を強いられた3枚スタンダップの完成が必要。
 磁力ぶらんぶらんをぽいっとランページ逆走に放る…という趣向は独創的だが成功率が低く、こんなの調べて知っておかないと分からないし、色々無理がある。

[ヘドラ襲撃]………特殊フレンジーもの。ターコイズ色(ヘドロ色)の点滅を打って開始。1スイッチ1万5千点。100スイッチ毎にヘドラジャックポットが点灯。ドレインまで消えずに続くのでワンボールで粘るとなかなかと額に。
 ヘドラの描き下ろしグラフィックが面白い。こんな蛇足なフィーチャーを付け足してでもカルト怪獣ヘドラをどうにか登場させたかったのだろう。
 尚ヘドラの直轄リット方法は無く、唯一の方法は左下メーザーキャノンターゲットのミステリー。このミステリーは単純に直接3回以上ヒットで有効化。

[コンボショット]………今回のコンボ、なんかややこしいな?と思ってよくよく調べたら、トーキョー,ニューヨーク,ロンドン,パリ4都市ごとに異なる3つのコンボショットが用意されていて尚且つ、都市関係無く終始有効なシークレットコンボ10種が混在していた。レイジコンボとも別件。把握出来るかよそんなもん。
 時々各都市のオシャレなゴジラ絵葉書が表示されるが、それは一都市につき3種課されたコンボを成し遂げた証しだそうな。シークレットコンボも10本完遂で隠しウィザード挑戦権の半分が貰えるとか…。

[スキルショット]………通常はプランジを加減してバンパー地帯にボールをぽろっと落とせば成功。基本値25万。メカゴジラレーンロールオーバーを踏むもよし、バンパーヒットもよし、バンパー下スイッチを踏むもよし。
 シークレットスキルもあって、500万の左リターンレーンと、1000万+ゴジラパワーアップ+援軍獲得のランページスピナーレーン逆走ショット。特にランページスピナーはきちんとゲージで測れば意外と成功率が低くないので、狙って損はない。成功時ミニラの映像も楽しい。



 とにかく激しく、熱く、楽しい。是非打って欲しい。

 ゲーム性及び全体構造の精緻さではKエルウィンの前々作「ジュラシックパーク」に軍配が上がるものの、直情的な爆発力ではエルウィン作としてもスターンピンボールとしても、本作ゴジラが傑出している。

 ビルディング崩壊ゴジラマルチボールやメカゴジラ発進マルチボール、ダイナミックな怪獣バトルイベントや味方怪獣とのタッグ戦。それらに折り重なるようにしてジェットファイターズアタック、怪獣ランページ、UFOアタック、デストラクションジャックポットなどの大役がのべつ幕なしに勃発する。

 世界の大都市を踏み荒らしながらも侵略者から地球を守り、挙句の果てにはゴジラはラドンと共に宇宙へ飛び出し、木星圏でX星人操る宿敵キングギドラと対決する。それらをシティーコレクトや戦いの勝利、多段階フェーズウィザードとヴィクトリーラップでプレイヤーに追体験させるのだ。熱い!

 何と言ってもボールロックの段階が明瞭で、尚且つ最も簡単な[ゴジラマルチボール]が痛快
 特段豪華版でのビルディング屋上のボールロックとマルチ開始時におけるビル崩壊のボールリリース決壊は、初見時の誰もが荒肝を拉がれるだろう。
 LCDには群衆が逃げ惑う最中、木っ端微塵に破壊される名古屋城(fromモスラ対ゴジラ)が映される。ブルーオイスターカルトのGodzillaというBGM選曲も素晴らしい。

 [メカゴジラマルチボール]発動時における仰々しいターゲットバンクのモーター回転とジャンプボールマグナキャッチも、視覚的に実に凝ったメカアクションでダイナミック!しかも難易度の高い時間制スーパージャックポット獲得時は、LCDで表示されるメカゴジラとの戦いと都市の破壊ぶりが相まって、この上なく激越な盛り上がりを見せてくれる。

 ボールフローも卓越極まっており、モーター上下するビルディング貫通で左右ランプレーン軌道を左右リターンへ自在に操作するボールディヴァートには驚愕。
 メカゴジラ+スクープ+単品バンパー地帯の活躍、サイドループと左オービットとテスラスピナーのレーン共有活用、プランジャーレーン×マグナグラブ×ランページスピナーレーンの掛け合わせもお見事。


 凡庸なプレイフィールドデザインだと行き止まりとデッドスペースだらけで忽ちプレイヤーを苛立たせるのに、レーンからレーンへ、パートからパートへ。ここでは縦横無尽に全て開通させている。プレイヤーは無限に用意されたボールフローを自ら縫い合わせて怪獣達と対決できるのだ。快哉!

 特に筆者お気に入りは[怪獣ランページ]
 シヴィアなシングルボール長期戦ながら、サイクル点滅狙い打ちによる連続爆破巨額ボーナス。ショット成功の度にメガロが!ガイガンが!チタノが!次から次へと戸板返しに高額カウントダウンボーナスが雪崩れ込む。12回目ショット成功のEx.ご褒美獲得時にはジェットジャガーさんまで神々しく降臨する。
 ジェットジャガーは日本ではゴジラマニアしか知らないが、『ゴジラ対メガロ』が繰り返し放映されたアメリカの方では、より有名なのだそう。

 緊張感漲る[デストラクションジャックポット]成功時の爆裂もいい!ゲーム開始時は数百万程度だったヴァリューが、後半積み立てられて1千万2千万と高騰し、更に2X、3X、4X……と倍掛けがのし上がってゆく。ゴジラと怪獣が乱闘して工事現場をぺしゃんこにするX上昇のデモも痛快。ピンボールチャイムが鳴るジョーク音響も最高。

 また全編サウンドと映像演出も大変丁寧に肉付けされており、潤沢に購入してある贅沢な本編映像使用は勿論、違和感なく付け加えた描き下ろしオリジナルLCDアニメーションも見どころふんだん。X星人指令基地とそのアテレコは特撮ファンも必見だろう。

 ゲーム開始時の言語選択[English/Japanease]では、是非日本語をセレクトして欲しい。
 “地球人に告ぐ!お前たちを征服する”
 “失敗は計算に入らん!”
 “ゴジラに協力者がいるようだ”
 “人類の終焉だ!”

 などなど、X星人の日本語アテレコの素晴らしいこと。

 殊に、
 “ゴジラが次にどこの都市に現れるか想像するしかありません”
 “壊れた橋に列車が来ました!見ていられませんー!”
 “この破壊の中から何か良いことが生まれますように―――”
 “ありがとう、ゴジラ!!”

 ……と、正に昭和時代調の鮮やかな口跡を聴かせるニュースアナウンサーも絶品だ。

 やれスターンピンボールの傑作だ、やれ21世紀ピンボールの代表作だと、過去の名作群を押しのけてでも褒めそやす巷間での評価も、打てば打つほど、十二分に納得がゆく。
 筆者の5段階評価も★★★★★。但しPro版の星は4つにしておこうかな。ブリッジ崩壊,ビル崩壊,メカゴジラ発進メカの剥ぎ取りは、やはり寂しいもんね。



 さて、冒頭で述べた通り「ゴジラ」PINは本来他社の企画であったはずが、ライセンス部長Jダンクバーグのすばしこい機転により、スターン社のデザイン部門へ突如に転がり込んできたテーマ素材だった。

 それでもスターン側によるゴジラ愛とその敬意は、歴々と、灼々と、プレイする者へ激しい熱波として伝わってくる。決して生半可なお仕着せ仕事の緩みは感じられない。

 横取り企画とは言え、デザイナー達は確実にゴジラを愛してくれている。


 スターン製ゴジラピンボール企画立案の端緒である“スプーキーからむしりとった蛮行”は、

 『先ずスプーキー社がポートフォリオと青写真を携え日本の東宝にオーダーしたところ、ゴジラピンボール許諾が競売に掛けられた。しかしそれを知ったスターン社による入札額が、スプーキーより上回っただけの話』

 ―――という着地点で、とりあえず鞘に納めさせて頂きたい。

 この件について、出し抜かれた側のスプーキー社のファウンダー チャーリー・エメリーは、
 『永年の宿願だった企画を土壇場でかっ攫われた当初はとても口惜しかったが、スターンゴジラの出来は最高に素晴らしいこともあって、今ではふっきれている。両作を所有するロケでは決まって自社ウルトラマンPINとスターンゴジラPINが並べて設置されている。その雄姿を目にして、とても幸甚すら感じ入る』
 ……と語っている。

 一方ゴジラ企画がスタートしたスターン社。デザイナーは今をときめくスターデザイナー筆頭のキース・エルウィン
 「ジュラシックパーク」「アベンジャーズIQ」などでの過去作では、誰も考えつかないボールフローが縫い合わされたフィールドデザインとルールセットを考案し、一流シニアデザイナー達ですら舌を巻く、一目置かれる俊英だ。

 彼に今作ゴジラを託したのはウィリアムス最後の傑作「モンスターバッシュ」の生みの親で、今やスターン社デザイン部部長を現任するジョージ・ゴメズ

 実はゴメズこそ、元来のゴジラおもちゃコレクター。
 ゴジラピンボール企画リードデザイナーがキースエルウインに決まったある日。キースのオフィスにゴメズが自慢のゴジラおもちゃセットを持ってやってきて、65歳のゴメズ,50前のエルウィン2人して大怪獣の陸橋破壊ゴジラごっこをして楽しそうに遊んでいた。

 その時に閃いたのが、陸橋破壊・ブリッジマルチボールだった。

 それを皮切りに、キースは厖大な量の草案と脚本に筆力を弾ませた。
 LCDアニメ担当者チャック・アーヌストはそれらを診てあまりのコンテの多さに不可能に近い所業と感じたが、キース達となら一致団結して可能にして見せる、と奮い立っている。

 プレイフィールド/バックグラス/キャビネット美術担当のゾンビ・イエテイことジェレミー・パッカー“今回の仕事は決して簡単ではない”と襟を正すような覚悟を決めたという。

 歴史が深く、世界規模で誰もが知っている鬼神ゴジラ。偉容と魁偉さと威圧感溢れる大怪獣を、ピンボールプレイヤー及びゴジラファンら皆が納得できる形で描き切るのは、決して容易なことではない。

 ジェレミーは「タートルズ」の時も彫心鏤骨の末に渾身で仕上げたが、ゴジラは更なる苦心惨憺が伴った。そっくり写実するか、自分の作風に落とし込んですり合わせてアレンジするか。それを踏み来る段階からして試行錯誤に喘いでいる。
 オリジナル映画から抽出した作風で、'60年代や'70年代風の色合いで何度も描いたもののしっくりこず、結局全部描きなおすことの繰り返し。

 スターン社と、チームのメンバーと、幾度も重ねた議論は数知れず。皆で東宝のゴジラ映画を10本ほど、鑑賞と精査を繰り返す。入手可能なコミック版まで調べたそうだ。

 やがてキース、ジェレミー、チャック、ハリソンらチーム一同は、「怪獣大戦争('65)」―――米題“Monster Zero”をゲームの重心にすることを決断する。

 ゴジラ映画史上では駄作ではないが突出したマスターピースという訳でもない。むしろヴィランとなるX星人の知名度は一般的に低く、果たして初代を差し置いてメインに据えることに値するかどうかが問題だった。

 しかしエルウインは怪獣大戦争のプロットにおける魅力をこう語っている。

 『“X星人”はシリーズ上マイナーな悪役だけれど、木星圏からやって来た奴らが、かつてゴジラに倒されたライバル怪獣を引き連れて地球侵略を企てる。それを人類の脅威だったはずのゴジラが迎え討ち、地球の守護神となる。この最強のドラマツルギーを活かさない手は無い、と思ったんだ。ゴジラが破壊の悪魔のような存在になったり、人類の救世主になったりするのはとても面白い!ここでは2つの物語を融合させた。更にメカゴジラも登場させる。至宝この上ない取り合わせだ。』

 『ところが使いたくても使い切れない、せっかく許可を貰って来たのにやむを得ず切り捨てなければならない怪獣や作品がいくつも出てきてしまった。これを東宝側に心苦しく報告したところ、“全く大丈夫ですよ。是非自由闊達に、素晴らしいものを作って下さい”と言って貰えて心強かったよ。』

 『でもね、かなり努力したんだけど、X星人のキャラはたくさんいて、名前と発音が難しくてね。正直誰が誰だが分からなかったよ。本国ゴジラマニアに仕上がりを笑われたりしないか心配だよ。』


 いやいや、そんな懸念はご無用。X星人指令本部のアニメーションは最高の出来。人類を高圧的に威嚇し、ぷしゅ〜と上昇する地球儀モニターを睨んで東京やニューヨーク制圧をたくらむ、あの映像とアテレコには、うるさ型の特撮ファンすら文句はないだろう。

 また、キースはプレイフィールド全景を都市に見立て、橋、列車、そしてビルディングをゴジラが破壊し、建造物が崩れ落ちるメカニカルアクション及びゲーム性を中心軸に据えるプランを打ち出し、それらにピンボールゲームと相性の良い怪獣バトルモードと折り合わせる構造を組み立てていった。

 苦労したのはメカチーフのハリソン・ドレイク。ビルが3段階上下し、中を交差する各層のワイヤーレーン切り替えを、そのビルの上下稼働そのものが役割を担う。とても複雑だが、ボールディヴァーター経路とビル崩壊のダイナミズムが融合している。こんなの見たことない。アウトスタンディング!

 『先ずはキースがモックアップ(紙型)を作って僕と話し合い、崩壊ビルディングを3Dプリントで試作して、ビルが崩壊する段階、球が中を潜り抜ける切り替えを、何度も何度も試作した。まるでウェディングケーキみたいな多層階。上昇したり下降したりすることでボールの進路を変える。これは建物の中で切り替わるX字型のディヴァーターランプレーンだ。しかしこんなにも大掛かりに下降すると、稼働構造がキャビネットの内側や底へ接触しないよう配慮しなければならない。その為ビルの仕組みを慎重に構築していった。「ドクターフー」のせり上がりメカのCAMディスクが参考になったよ。その「ドクターフー」や「メディーヴァルマッドネス」のお城崩壊よりも更に複雑なものとなった。ボールロックポイントもピンボール史上、最も高い位置に収められている。』

 『キースにとってもこのビルディング崩壊は最高の出来となったと思うよ。だって「ジュラシックパーク」の時はTレックスのステッピングモーターでトラブルが起きちゃったからね。でも今回のゴジラのそれは堅牢。最初の組み立てが終わってからは何も問題も起きなかったよ。』


 因みに、そう語るハリソンドレイクこそ、屋上ボールロックのアイディアを湧出し、実現させた功労者。お陰でプレイフィールドの階層は4層分のランプレーンと5層目のビル屋上を含め、記録的な5階建て構造に仕上がっている。益々アウトスタンディング!

 ゴジラの足に見立てた、サイドフリッパーの袂にあるマグネットグラブも、アイデアといい、仕上がりといい、ゲーム上の活躍ぶりといい、他に例が無くとても上々の出来映え。
 大きなスチール製の柱のようで、実は衝突球。中にはニュートンボールが入っている。
 ダイレクトに激突させるのは勿論、プランジャーレーンから。ビルから。倒壊する橋から。一旦マグネットで捕まえて、サイドフリッパーに流す。しっぽを振るようにぽいっと放るテールウィップなんて技も有る。
 このマグナセーヴとニュートンボールの融合ギミックにより、通常ありえないコンボショットがいくつも実現している。

 また、聳え立つメカゴジラ袂の単品バンパーは、当初2つあった。しかしそのうち上のものが全く生きない為、本来キースが嫌いなスクープへと変更することに。
 そのスクープから当初アイテムショップのアイディアが膨らんだが、いざパワーアップアイテムがずらずらと並ぶ画像を出してみると冗長に感じたため、ゴジラレベルに応じた二者択一の選択へとすっきりさせた。

 またそのスクープ設置によってバンパー地帯、及びメカゴジラゾーンが一気に呼吸をし始め、UFO,キックアウト,スキルショット……と活況づいた。
 “いやいやバンパー1個だけじゃ意味ないだろ”と当初単品バンパーに反対していたゲイリー・スターン御大も、左右スリングと激しく爆ぜ合う単品バンパーのプロトタイプを打ってみて、すぐに機嫌を良くしてくれたそう。
 因みにゲイリーは「ゴジラ」発表時の2021年秋、スターン社社長を退任し、会長兼CEOの役職に就いている(新社長はディズニー出身のセス・デイヴィス)。

 一方、ミニラの活躍を配したのはプログラマーのリック・ネイグル。スキルショット、ボールセーヴ、そしてTILT判定。
 尚ボールセーヴリミットは回数ではなくて時間制。2度3度落としても大丈夫な時も。ボール復活の度に8通り程のミニラ映像が楽しめること請け合い。

 ジェレミー・パッカーの筆勢もいよいよ大詰め。
 使うべき,切り捨てるべき怪獣の選択に悩んだり、代表的に2タイプ存在する東宝『ゴジラ』の由緒正しいロゴを、ゲームに用いる際にはある程度加工せねばならなかったり。
 この時もライセンサー側の対応は協力的且つ寛容で、極めて自由に創出することができた……とキース同様、日本の東宝への謝辞と共に後顧している。

 『ぜひ楽しんで、ユニークなことをして、素敵な作品を作って下さい……って言って貰えて嬉しかったよ。東宝の人々はとても素晴らしい方達で、一緒に仕事するのが楽しかった。もう1年制作期間があったら、ずーっとゴジラアートを描き続けていたと思うよ。ゴジラはテーマ性の幅と、素材の量と、内容の豊かさが、怪獣並みにとてつもないからね!』

 ―――本機種完成から3年後。スターン社及びジェレミーはゴジラ70周年記念特別リプロダクションとして、ホントに新たな描きおろしアートを追加したのは前述の通り。

 因みに。スタッフ一同、'50年代、'60年代には誰も生まれていない。なのに、ここまで音楽も映像も、完璧に当時の空気をまといながらも現代ピンボールとして完成していることも特筆。

 キースは当初から“アメリカ人がゴジラを初めて観た時の衝撃を甦らせたい”と、日本語とアメリカ英語の字幕を両方使うことをはじめから決めていた。
 ゴジラのテーマのサウンドトラック許諾購入もきっちり取ったし、ブルーオイスターカルトのナンバーも早い段階で押さえられている。

 しかも、LCD映像及びアニメーション担当は1st.チーム最年少のチャック・アーヌスト
 歴代ゴジラ映画は粒子が粗く、各作品ごとの画質に差がある。更にゲーム上必要なオリジナルアニメーションも描かなければならない。それを全て整合,ミキシングし、違和感なくひとつのパッケージに整えたのは彼の手柄だ。

 X星人の高圧的なスピーチアニメーションも見どころ,聴きどころの一つ。
 これは3Dアニメーションスタジオ撮影により、表情を作ったり、セリフを述べたりするモデルの社員がいた。フェイシャルリグ及びジェリーリグ付きモーションキャプチャーシステムというものだそうだが、想定以上にとても上手くいった……とエルウィンも、モデルをさせられた当人もご満悦。

 そうそう、忘れてはいけない、スターンゴジラはInsider-Connectedプラットフォーム機能初搭載の機種なのだ。プレイヤーも、オペレーターも、オーナーも。アカウントから筐体を通じ、スマホ/PC連携で、いつなんどきもアクセス出来る様になった!

 スターン社内では『ピンボール筐体にさもしいQRコードを付けるなんて愚の骨頂』と反対の声もあったが、これはプレイヤーの体験とピンボールゲーム内の世界をシームレスに融合させる大発明。キースにとっても絶対満足してもらえるものだと自信があった。

 プレイヤーが各々のアカウントで戦績をチェックしたり、日程限定イベント参加で自分の順位が発表される利便性やメリットは言わずもがな。
 一方、オペレーターサイドでのコネクテッド最大のメリットは、オンライン接続さえしていれば、コード更新もデバッグも自動で進められてゆくこと。

 “数多くのロケーション地を持つオーナーにとって、新コードがリリースされる度、車でサンディエゴまで行ってアップデート、ロサンゼルスまでいってからまた車で―――と、こんなの最悪な作業だったよ。でも今のスターン台ではそんな悪夢とはオサラバだ!”
 と、プレイヤーの評価同様、今回の新たなプラットフォームはオペレーター界隈からも好評嘖々なのだ。

 そう言えば発売後1年くらい、メカゴジラマルチボール関連でフリーズするバグに悩まされたけど、勝手にフィックスされたし、すいすいコードがヴァージョンアップして最終ウィザードも入ったもんね。快適、快適!
 いやはや、何から何まで素晴らしい。

 キースもゴメズも、ジェレミーもネイグルもドレイクも、手が掛かった以上にとても仕事が楽しかったと異口同音に語る一方で、プログラマーの一人ディーン・グローヴァーが、いくつかのモードを手掛けたのちに癌に斃れ、2022年11月に逝去する……という、非常に残念な訃報もあった。享年59歳。

 グローヴァーはWMSバリー製「セイフクラッカー」やウィリアムス製「コンゴ」でのキャリアは勿論、スターンではビートルズやタートルズ、マンダロリアンやツェッペリンでも、ソフトウェア開発に携わっている。
 その後コード更新された筐体ディスプレイでは、キースエルウィン自ら挿入したディーンへの弔辞メッセージがデモ中に表示されている。


 さて今を時めくキース・エルウィン。自身が苦手なはずのハードロックテーマの「アイアンメイデン」を鋭利な捌きぶりにより高い完成度で仕上げて礼賛に浴したデビュー作以来、「ジュラシックパーク」「アベンジャーズIQ」で3本連続ホームラン、更に今回のゴジラは満塁場外ホームランといったところ。

 ドイツのピンボール大会IFPAトーナメントへ赴いたらアイアンメイデンTシャツとゴジラグッズを携えたピンボールファンに囲まれてサインをねだられ、『元の表現者を差し置いて俺のサインでいいのかよ?』と、恐悦するほどの歓待を受けたという。

 更に「ジェームズボンド60th」という、ゴジラに負けないビッグネームで、高額な特別版のアナクロタイプ・プレイフィールドデザインをも手掛けている。

 『オールドファッションな平面台をデザインしろって会社に言われてるんだけど、もしエリックならどうする〜?お前のデザインって、すげぇ複雑な多層階フィールドばっかじゃん―――とリモートで話してたジャージージャック社のエリック・メウニエルに訊いてみたら、“勿論やるよ!オールドタイプの台も是非作ってみたい!”って言われてさ、それで背中を押された気がしたんだ』
 と言って引き受けたエルウィン。こちらも完売御礼。お値段、なんと19,999$。贅を尽くした映画シリーズ25本、ボンド6代分!
 通常のピンボール筐体の倍の価格であろうと、6人のボンド、6人の俳優全員の許諾がひとつに収められたようなボンドグッズ。
 ボンドコレクターからしてもそんなの前代未聞だったそうだ。限定製造数500台分の買い手など、すぐについてしまった。

 その後2024年発売ピンボールの中で最高の売り上げを記録した「ジョーズ」、2025年の最新作「キングコング」と、今も燎原之火の如し、エルウィン無双が続いている。 

 一見もう業界では怖いものなしとも思えるキースエルウィンだが、スターン社に入社が決まって初めて出勤する時は恐ろしくて足がすくんだという。しかも未だに苦手で、とても嫌っているデザイナーがいるらしく……?

 『初出勤の時はスターンのビルの中に入るのが怖かったよ。厳つい大先輩が大勢いる。スティーヴ・リッチー、ジョン・トルデオー、それにジョン・ボーグも。けれどボーグは “これが俺のCADライブラリ。こっちは俺の作りかけアイデア。そっちの奴は結局使わなかったメカだ。自由に使っていいよ〜” と言ってくれた。ドワイト・サリヴァンは “今俺の作ってるコレどう思う〜?是非お前の感想聞きたいんだけどさぁ” と何ともフランク。ほぼ同輩のジャック・デンジャーとはいつも助け合う仲になれたし。』

 『ただね、名前は伏せておくけど、かの某外部デザイナーだけは、初号機をプレイしただけで声を荒らげて激高してくるような、分からず屋の癇癪持ちだったんだ。その後競合他社の専属になったあの人だよ!』


 あぁ、あの人ね。結局2024年末にそこからも解雇されたんだっけ。鼻の利くピンボールマニアなら誰のことか、すぐ分かりますね………。

 ―――それでは皆様、今後とも素敵なピンボールライフを!


▲右ランプレーン。左オービットランプレーンと共にこの箇所はすいすい通せるようマスターしておかないと話にならないくらい重要な箇所。 ▲ビルディング。初心者はとにかくここを通そう!ショット4回でゴジラマルチボールが始動する。 ▲スクープはバトル選択、都市選択、ゴジラパワーアップ、ゴジラレベル二者択一、同盟怪獣到着……と、蓋が持ち上がる程大量の役が盛られている。
▲マグナグラブの正体は磁力キャッチ機能付き衝突球型の特殊キャプティヴボール。当ててよしディヴァートコンボ利用もよし両ボタン解放で放るもよし ▲今回準主役や強敵キャラクター達の登場数がハンパ無い。リーダー格はキングギドラとメカゴジラ。ヘドラまで登場する。 ▲この辺油断ならないゾーンで、スピナー通してメカゴジラレーン経由して、うまくフリッパーに還るかと思ったら右アウトレーンに落ちる悲劇も。
▲ジェレミーパッカーは終始おやじギャグ連発で、毎日一緒に仕事していて全く飽きないくらい面白いヤツなんだそうだ ▲英語版アナウンサーの声はレイモンド・バーが扮した。1作目ゴジラのアメリカ公開時の雰囲気をそのまま再現することに成功している。 ▲本機制作期間はパンデミック禍の真っ只中。その鬱勃とした焦燥感が一挙に表出して爆発するようなゲーム内容に仕上がったと思う、とはキースの弁

《執筆後期》
(2025年5月4日)